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第48回産業科学フォーラムを開催しました
第48回産業科学フォーラムの開催報告
日時 / 2025年7月4日(金)14時~15時20分
場所 / 名古屋大学VBL棟3階ベンチャーホールおよびオンライン方式
参加者 / 15名(内オンライン参加者 5名)
講師 / 澤 博 上席研究員(名古屋大学名誉教授)
講演タイトル / 放射光X線が切り拓く新しい科学
<講演概要>
「どうしてこのような研究をやりたくなったのか」、研究者にはそれぞれに思いのあることであるが、講演者は講演の中でその問いに対する答えを出されていた。分子・原子の構造や物性を研究する上で、X線は非常に有用な手法である。X線スペクトロスコピーは強力な手段であるが波数空間・エネルギー空間の情報に限定される。一方で、X線回折・散乱の解析で結晶内部が可視化でき、分子・原子の構造や状態がすぐ理解できるというのは大きな利点である。ただし、X線の強度や波長により解明できる範囲に限界がある。放射光X線は、実験室系のX線装置に比べて、超高強度で波長可変というのが特徴で、新しい測定手法や解析手法が開発され、非平衡状態の解析や磁気散乱・非弾性散乱の解析が可能になっている。
講演者が進められた内包C60フラーレンの構造解析から、フラーレンと水素分子やリチウムイオンの内包状態と外界との相互作用の例が紹介された。フラーレンに穴をあけて水素分子を閉じ込めた時、水素分子はどこにいるのか。水素分子は炭素原子に比べればその電子密度は非常に低いが、解析の精度を向上させれば捉えることが可能である。解析の結果、フラーレンの内部に水素分子やリチウムイオンが捉えられていることが示された。
更にこれらの成果の実験的な展開によって、価電子密度解析による電子密度と量子力学計算からの電子密度の比較が可能となったが、そのためには極低温解析・高分解能解析など、解決しなければならない問題も多かった。アミノ酸であるグリシンの価電子密度解析から分子軌道が直接観測でき、スピネル酸化物のFeV2O4における縮退軌道が観測できた例が紹介された。
最後に現状の問題点と将来の展開、講演者がやり残したこととして、価電子密度解析の将来に向けての必要性が紹介された。
