上席研究員リスト
田中 清明(タナカ キヨアキ)
ナノテク・材料
経歴・プロフィール
1969年 | 東京大学理学部化学科卒業 |
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1972年 | 東京大学理学系研究科化学専攻修士課程修了 |
1975年 | 東京大学理学系研究科化学専攻博士課程修了 理学博士 |
1975年 | 東京工業大学助手(工業材料研究所) |
1983年 | ニューヨーク州立大学バッファロー校客員研究員(文部省在外長期(乙種)研究員)(12ヶ月) |
1990年 | 名古屋工業大学助教授(化学教室) |
1993年 | 名古屋工業大学教授(化学教室) |
1995年 | 名古屋工業大学大学院工学研究科教授 |
1997年 | 名古屋工業大学工学部教授(材料工学科) |
2003年 | 名古屋工業大学大学院工学研究科教授(おもひ領域) |
2010年 | 名古屋工業大学定年退職、名誉教授 |
2010年 | 名古屋産業科学研究所・上席研究員 |
学位 | 理学博士 |
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学会 | 日本化学会、日本結晶学会、日本セラミックス協会 |
教育 | 教養および学部で量子化学の基本を、大学院で結晶学、X線回折理論、精密X線解析を講義 |
研究 | X線解析の最先端分野のひとつである、X線精密電子密度解析を、理論・実験の両面で研究している。その結果、分子軌道(MO)をX線回折法で求めるに至り(XMO解析:X線分子軌道解析)、波動関数に基づく分子の根本的な特性評価が可能になった。化学・物理学・薬学での応用が期待される。これは現在、世界の最先端をリードする成果である。 X線回折法により測定される構造因子をフーリエ変換すると、分子の電子密度が求められる。この電子密度は実験で求められる物理量のうち、最も波動関数に近いものである。この為、X線回折理論は波動関数を求める量子理論の進歩と共に発展し、1969年のR. F. Stewart教授による二中心X線散乱因子の定式化に至った。その後、1990年代にかけてX線回折実験で求める電子密度を解析して、分子軌道等を求める試みが行われたが、2018年、筆者がXMO解析法を発表するまで、誰も成功していなかった。これにより、波動関数をX線回折法で求め、軌道エネルギーを分光法で求める、量子理論を実験で支える体制が完成した。 定年退職までは、結晶場理論に基づく原子軌道関数を使用して、ペロブスカイトKMF3(M:Mn, Fe, Co, Ni)のスピン状態、ヤーン・テラー結晶KCuF3およびCu(diazacyclooctane)2(NO3)2結晶の低対称場におけるCu2+イオンの3d軌道関数を決定した(XAO解析:X線原子軌道解析)。さらに近藤結晶CeB6では、温度上昇とともに、B 2p電子がエネルギーの近いCeの5d8軌道を満たす為、類似形態の軌道をもつ基底状態Ce 4f 軌道の4f電子が不安定化し、その一部が、軌道に遷移する現象を発見した。現在では、有機結晶から希土類化合物まで、量子力学に基づくX線精密電子密度解析が可能になった。 |
関連技術 | 精密回折強度測定に必要な結晶整形法(特許)とキャピラリィーへの搭載等の実験技術、多重反射回避測定法等の精密測定技術、データ処理及びXMO/XAO解析等の解析およびフーリエ合成による電子密度計算等のソフトウェアシステムの開発 |
活動実績 メッセージ など 特記事項 |
XMO解析法は、量子力学の根幹である波動関数を実験から求める方法である。波動関数は“observable”でないため一定の制約があるが、求めた分子軌道と電子密度の関係を精査すると、分子中の結合の実態がリアルに明らかになる。これを”IUCr2017” (ハイデラバード、India, 2017/8/24)、”EMN Quantum 2019“ (バルセロナ、スペイン、2019/8/22), ”Analytix 2023“ (大阪、2023/5/18)で発表している。その他欧米で開催される多くの国際会議から招待講演を依頼されている。現在、XMO/XAO解析法に関する本を執筆中である。 量子力学を直結する日本発のXMO/XAO解析法は、次世代の科学を支える方法であるので、XMO解析法を含むX線電子密度解析法の普及は重要である。関連技術で述べた実験法、ソフトウェアを公開する。現在は2次元検出器による測定が主流であるが、次元検出器における多重反射回避測定法の研究は、次世代精密測定の基盤となる技術であるので、この開発も含めて、民間・大学を問わず、積極的に協力する用意がある。また、XMO解析法には、多くの未開拓の最先端課題があるので、若い学生諸氏のこの分野への参入を期待する。 |