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公益財団法人 名古屋産業科学研究所 研究部
2012年度研究会報告

ブレインフーズ研究会(健康、バイオ分野)(代表 小林一清)

 食品のもつ機能性によって、日常の食生活から疾病を予防し医療費を抑制するニーズが高まっている。特にアルツハイマー病、認知症等の脳内老化の予防等の社会的ニーズは大きい。そこで、脳機能の維持・向上に焦点を当て、脳機能に与える食品機能性を長年にわたって研究している学識経験者を中心にして、当地域が強みとするモノづくり企業がもつ産業技術力を活かすことに着目して、「ブレインフーズ研究会」を発足させた。脳機能への効果を分析するバイオマーカーと測定技術を検討し、先進的な手法を用いて、脳機能の維持・向上にかかる機能性食品(ブレインフーズ)の開発を目指している。

 愛知学院大学心身科学部健康栄養学科大澤俊彦教授を中心として、平成2212月、平成23年3月、6月に研究会を開催した(事務局:名古屋市市民経済局産業育成課)。ブレインフーズの現状・課題の整理と最新の研究成果・知見について、この地区の学界および産業界と意見交換を行った。いずれも30名に及ぶ参加者があり、この分野の振興についての関心は高いことを実感した。

 これらの討論を踏まえて、参加各企業及び大学にアンケートを実施して、産産・産学連携の具体的なビジョンを探った。7社と1大学から意欲的な提案があったので、これを受けて平成23年8月に第4回目の研究会を実施して討論を深めた。関心のとくに高い3社を中心として、平成2311月に個別に面談・協議して、2研究グループを結成することができた。さらに1社から名乗り出があったので、これら4社を中心として、具体的な助成金申請に繋げるために、中部経済産業局などと連絡を取りあって情報を集めてきた。現在、提案書の作成に向けて、受託試験を実施するともに、具体的な協議を進めている段階である。名産研のブレインフーズ研究会としては、研究期間終了後も引き続き、これらの3研究グループ(4社)の競争的資金の獲得に向けて、積極的な支援活動を行っていきたい。

磁気バイオテクノロジー研究会(ライフ、バイオ、環境、健康分野)(代表 毛利佳年雄

 磁気プロトニクスは、超低周波(ELF)磁界で水中の自由プロトンを増加させる新原理であり、水が関わる化学反応を促進し、生物細胞のミトコンドリアのATP生成能を向上させて生物を活性化する。平成24年度は、2回の全体集会、6回の幹事打ち合わせ会、2回のフェアー出展を実施した。研究開発活動では、磁化かんらん岩骨材による高強度コンクリートの創出、弱磁性かんらん岩の空気中加熱による強磁性化、かんらん岩粉末造粒・焼結粒のマトリクス配置ゴム皮膜シートの試作、などの新技術開発で飛躍的な成果が出現した。居眠り運転防止覚醒技術は、新発見の鳩尾の生理的磁気刺激でさらに適用年令層が拡大し、高齢者の不具合健康回復効果なども、引き続き効果の事例が累積している。

(1)新知多コンクリート工業(株)で、コンクリート試験練り・強度測定実験が2回実施され、磁化かんらん岩粗骨材(5~20mm長)の使用(普通ポルトランドセメント、水コンクリート比30%)によって、13週圧縮強度85N/mm2 が得られた。非磁化かんらん岩骨材を用いた従来のコンクリートに比べて、約33%の強度向上である。本高強度コンクリートのボード上では、パルス列分布磁界の効果で、野菜苗などの植物の成長が早い

生物活性効果があり、高強度の面と併せて、日刊工業新聞記事2件を含めマスコミ記事報道が5件あった。

(2)かんらん岩粉末の造粒・焼結試作が新興窯業(株)によって種々の形状で

実施され、弱磁性かんらん岩が空気中加熱によって強磁性化するという新発見がなされた。また、北海道のミツウマ(株)によって、焼結粒をマトリクス高密度配置後加硫によってゴム被覆する実用性の高い技術が開発された。

(3)健康応用では、2つの分野で画期的な成果が上がった。ひとつは、居眠り運転防止覚醒効果であり、新たに発見された鳩尾磁気の磁気刺激感受特性を基礎に、運転者の鳩尾に磁化かんらん岩焼結ネックレス・ペンダントを当てる方法により、高齢者のみでなく若年層にも覚醒脳波が顕著に現れることが分かった。名大、名城大との共同研究であり、成果は米国電気電子学会論文誌に掲載された。もうひとつは、磁化石充填パイプ撫でにより、2名の高齢者の前立腺PSA値、リウマチ指数が正常化した事例である。

研究会活動のフェア出展は、12月4日ウインクあいち中部地区医療・バイオフェアー(磁化かんらん岩による居眠り運転防止器・健康回復器の開発)、12月1819日名古屋大学野依学術交流記念館での東海地域アグリビジネス創出フェアー(磁化かんらん岩による高強度コンクリートと耐震防災農林漁業技術の創出)である。

回折法と分光法の融合による新規発光材料の開発研究会(エネルギー分野)(代表 田中清明

 平成10-11年度にかけて行った、「熱光変換量子環境材料の創出研究会」を発展的に解消して、本研究会を立ち上げた。以下の活動を行ったが、これまでの結晶提供者が定年により、結晶の提供ができなくなったので、別の研究者にお願いして、結晶を提供していただくことになった。そのため、研究体制が整わなかったため、一時的に停滞している。本年度は以下の研究を行った。

米国オークリッジ国立研究所において、前年度に引き続き、Ce11B6の中性子回折実験を行った。厚さ1-3mmの平板結晶を作成していただき、中性子の吸収係数を測定した。その結果、測定に使用した結晶には、0.75%10Bが含まれていることが確定した。今後の実験に有効に活用できると考えられる。また、4軸回折計の零点補正法を日本から持ち込んで、ビームラインの装置で使用できるようにした。ORNLSNSに携わる若手研究者のために講演・協議し、同時反射が中性子回折実験において重要であるとの認識で一致した。同様の講演は本年2月東海村でも行い、消衰効果の実測の可能性等、今後のJ-PARCにおけるX線及び中性子線回折の将来の豊かな可能性が明らかになりつつある。

 来年度は、5d4f遷移による発光を確認するための実験を積極的に行い、回折実験と有効に結びついた新規発光材料の開発を行う予定である。

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