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(財)名古屋産業科学研究所研究部
2010年度研究会報告

低炭素エネルギーシステム研究会 (代表 服部 忠)


 
将来の温暖化ガス排出規制強化に対して十分に対応するためには、現在の省エネルギーを中心とする対策技術だけでは十分でなく,炭酸ガスを回収、貯蔵するCCSCarbon Capture & Storage System)技術開発が推進されている.これに対して,当研究会では、昨年度に引き続き炭酸ガスではなく炭化・固体炭素としてリサイクルまたは貯留することにより低炭素社会を実現するための技術課題を抽出した.また,このような地域モデルを構築するため,化学工学の視点から,次世代の技術開発を目指すプロジェクトテーマの提案を目的とし、3回の研究会を実施して、以下の活動を行った.
 1. 有機資源の炭化をベースとした社会システムのあり方に関するブレインストーミング.
 2. 産業・民生オール電化を想定した社会システムのブレインストーミング
 3. 国際会議での話題紹介による,欧州における低炭素エネルギーシステムへのと取り組みに関する現状調査
 4.  下記提案公募に提案し,採択された.
 NEDO「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/水処理汚泥を利用した水処理省エネルギー利用技術の研究開発」:下水汚泥から炭化物を製造し,一部は汚泥と混合して堆肥化および水分乾燥時間の短縮,炭化物の水処理利用,堆肥化物の炭化原料利用等のトータルシステムで省エネルギーを達成することを目的.


中部都市鉱山研究会 (代表 藤沢 寿郎)

 1、H22年度小型家電回収事業への応募に関する打ち合わせ
    H22.4.2 於ナデイアパーク
    名古屋市民経済局、愛知県古紙協会、中部リサイクル協会、名古屋産業科
    学研究所、藤沢教授等の参加で経産省の小型家電回収事業への応募を検討。   
    4月23日の提案書の締め切りに向けて、応募書類の作成。

    管理法人・・・・名産研

 2、名古屋市・津島市小型家電リサイクル連絡会議
   メンバー
    座長・・藤沢教授、副座長・・竹内教授
    回収・・・名古屋市・・・ 中部リサイクルセンター     津島市
     中間処理・・・リサイクルテックジャパン、中西、アビズ、エコリサイクル
     行政・・名古屋市、愛知県
     管理法人・・名産研 
    H22.6.2に第一回会議開催しH23.3.9に第五回会議を開催しまとめを行った。
 3、㈱アビズ工場見学会   
    H22.10.21 35名の参加のもと開催した。
 4、環境デー名古屋2010に小型家電リサイクルブース出展
    H22.9.19久屋大通公園エンゼル広場で小型家電の回収、分解実験
    リサイクルの取り組み紹介パネルを展示

 5、木村メタル㈱工場見学
   H23.2.14関市木村メタル(中間処理工場)の見学を行った。
    藤沢教授、佐野助教、藤沢(名産研)


組込みシステム形式手法研究会 (代表 服部 忠) 
 
 平成22年度は研究会を6回(平成22年4月,5月,7月,10月,12月,平成23年2月)開催し,前年度に引き続いてAlloy, Uppaal, SMV, SDV(Static Driver Verifier), SLP(Spec-L Perfect),等,形式手法の調査及び形式手法によるシステム設計及び検証についての産業利用上の知見を収集した.また,11月に横浜で開催されたET2010 において,名古屋市工業研究所のブースにて研究会のパネル展示,及び,東海ソフト(株)ブースにて研究会の紹介プレゼンを行った.そして,平成23年1月に東京・秋葉原で開催された第8回クリティカルソフトウェアワークッショプ(8th WOCS)にて,中小企業の形式手法の取り組み活動について発表した.さらに,平成23年1月にEclipseプラグイン開発セミナを実施した.

 安全を求められるシステムの開発においては,形式手法が与えられた要件から正しいプログラムを作成するための手段としてだけでなく,要件が十分であるか,あるいは要件に欠陥が存在しないかを発見するための手段として利用されることが,安全にとって有用であり求められる.また,広く利用されるためには要件の十分性確認や欠陥検出を支援するためのツール開発が有用である.

 以上の観点を元に,次年度も引き続き,事例調査などの情報収集,システムのモデリング及び検証の実践,学会発表,セミナ開催,並びに,助成事業の申請を検討する予定である.


排水からの資源回収に関する研究会 (代表 中村正秋)
 現在までに3回の研究打ち合わせを行った.
1回 20091215日(名古屋工業大学)
 液体の処理に関して,関連技術および補助金獲得に向けた話題提供と議論を行った.レアメタル,VOCに関して背景・問題点,問題解決のための技術シーズ,③グループ単位で補助金への応募を行うこととした.
2回 2010125日(名古屋市工業研究所)
 レアメタル関連グループから,環境省科研費への応募書類が提出され,詳細について議論した.(その後採択された.)VOC関連グループからニーズが示され,問題解決のためのアイデアを議論した.
3回 2010123日(大垣市スイトピアセンター)
 施設見学を行い、環境省科研費プロジェクトについて,これまでの研究経過報告がなされ、今後の研究に関する討論を行った.

今後は、溶液中の有価資源の回収に関する調査研究、講演・見学会、各種研究助成事業への応募などを適宜、実施する予定である.


ピコテスラマイクロ磁気センサ研究会  (代表 毛利 佳年雄)

 これまで、1ピコテスラ(10-12 T = 10-8 G,地磁気は約0.5 G)の超微弱磁気を検出できる磁気センサは、液体ヘリウムの極低温システムで動作する超伝導量子干渉デバイス(SQUID)のみであった。近年、脳波(電気脳波EEG)とともに磁気脳波(MEG)による医療診断や生体磁気研究が拡がり、SQUIDのように大型で磁気シールドルーム必要な高価な装置ではなく、携帯が容易で室温で動作する1ピコテスラ磁界検出分解能の磁気センサが待望されている。研究会では、原理的に1ピコテスラ分解能の磁気センサが実現できるアモルファスワイヤ・CMOS IC形磁気インピーダンス効果磁気センサ(MIセンサ)を高度化し、平成22年度には開発に成功した(pT-MIセンサ)。

 高密度実装電子回路で構成したpT-MIセンサは、乾電池駆動の室温動作で手のひらサイズの小型軽量(100グラム)磁気センサであり、磁気センサを容易に検出対象物に密着させることができる(SQUIDプローブでは、液体ヘリウム還流のため検出超伝導コイルは5mm以上離れる)ため、生体の局所微弱磁気信号を高感度で検出できる。研究会メンバーは、このpT-MIセンサでモルモット胃腸組織片の自己発振磁気信号を検出した成果を、平成23年4月の国際応用磁気会議(台北)で講演する。

磁気プロトニクス研究会  (代表 毛利 佳年雄)

  磁気プロトニクス原理」は、超低周波の磁界を印加して水の中の自由プロトンを増加させる原理であり、生物細胞内の水の自由プロトンの増加によって分子モータによるATPの生成能を高め、あらゆる生物を活性化させる新技術である。研究会では20106月に、三重県菅島で採掘されている橄欖岩砕石の約3割に磁性があることを発見し、この磁性橄欖岩の集合体で空間的にパルス磁界列が発生する特異性を見出すとともに、磁気プロトニクス原理が発現して、種々の野菜類や動物(和金)の生長が促進されることを実証した。

この新規な成果を基礎に、研究会メンバーを含め名産研内に「磁気バイオフォーラム幹事会」が結成され、123日には、名産研主催、JSTイノベーションプラザ東海共催で「磁気バイオフォーラム創設記念シンポジウム」が同プラザセミナー室で開催された。(研究部ホームページ参照) 平成232月からは、菅島採掘企業(鶴田石材(株))が磁性橄欖岩砕石のサンプル供給体制を整え、生物生長の大規模実験が可能になった。2011年度は、この「磁性橄欖岩プロトニクス技術」を第四次科学技術基本計画の2大イノベーション(グリーンイノベーション、ライフイノベーション)の鍵技術に位置づけ、産学官による幅広い展開を行う予定である。

なお、20113月には、研究会の主要メンバーである京都大学医学研究科博士後期課程西村大学院生が、磁気プロトニクス研究で博士(医学)の学位を受けることになった。

熱光変換量子環境材料の創出研究会 (代表 田中 清明)

 東北関東大震災により、原子力利用に黄信号が灯り、世界的に原子力発電の是非について論議が巻き起こっている。今後エネルギー供給が、日本は言うに及ばず、世界的に不安定になることは不可避であり、エネルギーの有効利用は喫緊の課題である。本研究会は研究代表者等の発見した157における希土類錯体の4fおよび5d軌道電子の反転分布を利用し、200以下の廃熱を光に変換する技術開発を目的としている。平成22年度は研究会を核として、以下の研究体制の構築を行った。
1.研究会を2回開催した。4企業、2国立研究所、2大学および名古屋産業科学研究所の上席研究員4名が会員として参加している。本研究の目的を会員間で共有するとともに、研究上の問題点を検討した。
2.名古屋産業科学研究所主催の産業科学フォーラムにおいて、熱光変換量子環境材料の発見に至った経緯とその可能性について、研究代表者が講演した。
3.2国立研究所と平成23年度に、共同研究を行うこととした。試料結晶の育成と5d4f遷移に伴う発光を生起させる条件の研究を行う。


中部風力発電研究会    代表 林 農

 日本の風力発電事業は,エネルギー政策全般の動向に従って,近い将来急激に動き出すと考えられる.直近10年間に順調に増大してきた陸上風力発電の実績は,周囲を海に囲まれた日本の特徴を生かした洋上風力発電の研究開発に意欲をかきたて,着床式,浮体式の2種類の洋上風力発電研究開発国家プロジェクトとして進められている.この度(平成22312日)の東日本大震災で壊滅的打撃を被った原子力発電に代わって,再生可能エネルギーが国家のエネルギー政策の中心に据えられるに違いない.こうした中,名古屋の企業と大学関係者達が,中部圏独自の風力発電事業の企業化と産業振興を目指して,本研究会を設立した.5回の研究会は風力発電の啓発を目的として講演を実施した.
(1)各委員の技術・研究内容の紹介・要望,風力発電の最先端研究の紹介
(2)再生可能エネルギー,洋上風況精査の実証研究への勧誘
(3)風車ブレードの振動解析
(4)大型風車開発の歴史と技術課題
(5)洋上風況推定手法の最前線
今後は,調査研究,講演・見学会,各種研究助成事業への応募,中部圏内企業の参加要請などを適宜,実施する予定である.最近のNEDOの研究開発助成等の公募は40または45歳以下の若手研究者を対象としたものが増えてきている.これに対応するためにも本研究会も若手研究者の育成を含めなければならないと考えている.


ブレインフーズ研究会 (代表 小林一清)

 食品の持つ機能性によって、日常の食生活から疾病を予防し医療費を抑制するニーズは高まっている。特にアルツハイマー病、認知症等の脳内老化の予防等の社会的ニーズは大きい。そこで、脳機能の維持・向上に焦点を当て、脳機能に与える食品機能性を長年に亘って研究している学識経験者を中心にして、当地域が強みとするモノづくり企業が持つ産業技術力を活かし、脳機能への効果を分析するバイオマーカーと測定技術を検討し、先進的な手法によるブレインフーズの開発を目指す。
 愛知学院大学心身科学部健康栄養学科大澤俊彦教授(事務局:名古屋市市民経済局産業育成課)を中心として、平成22年度は12月と3月に2回の研究会を開催した。ブレインフーズの現状・課題の整理と最新の研究成果・知見について、この地区の学界および産業界と意見交換を行い、今後の活動の方向性を探った。いずれも30名を超える参加者があり、この分野の振興についての関心は高い。
 次年度には、ブレインフーズ(脳機能の維持・向上にかかる機能性食品)を幅広く捉えて、産業界からの要望を積極的に情報収集して、モノづくり、機能解析、分析・評価方法を確立するとともに、研究開発・商品化の促進を目指すことになった。その過程で、いくつかの競争的資金を申請し、その獲得に繋げていきたい。


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