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(財)名古屋産業科学研究所研究部
2009年度研究会報告
磁気プロトニクス研究会  (代表 毛利 佳年雄)

(1)「高感度マイクロ磁気センサと磁気センシング研究会」の成果である「SQUIDを超えるピコテスラ分解能磁気センサ(pT-MIセンサ)」を用いて、超低周波磁界を印加した水の磁化の検出に世界初として成功した。成果は201025日日刊工業新聞に掲載された。(別紙)この成果は、

  電磁波国際会議論文誌(電子版)PIERS Online 2010, Vol.6, No.2, pp.145-148に掲載された。また、超低周波磁界浴による筋肉弛緩(血行促進)効果を、同センサを用いた人体の皮膚のマイクロバイブレーションの測定によって実証した。(PIERS Online 2010, Vol.6, No.2, pp.161-164に掲載)

(2)研究会で確立した「磁気プロトニクス原理」(超低周波磁界印加による水分クラスターのサイクロトロン共振を介した磁化とプロトン移動度の増大による生物細胞エネルギー物質ATPの生成能向上原理)を、超低周波磁界発生装置を使用せずに、磁化した砂利を用いて等価的に実現する実験を開始した。イチゴ苗の栽培および和金稚魚の飼育で、有効性を確認した。

  (特許申請中)これらの実験は2010年に引き継いで実施する。この新技術は、省潅水・省肥料型の乾燥地緑化などのグリーンエンジニアリングに適用できると考えている。

高感度マイクロ磁気センサとセンシング研究会  (代表 毛利 佳年雄)

平成21年度は、当初計画通り、アモリファスワイヤCMOS IC形磁気インピーダンスセンサの飛躍的な高度化技術に取り組み、そのターゲットとした「ピコテスラ磁界検出分解能の超高感度マイクロ磁気センサ」の設計および試作・評価、応用計測を行った。

第1段階として、30μm径、10mm長の零磁気歪アモルファスワイヤに600ターンのコイルを施したヘッドを用い、ノッチフィルタ等の電子回路を使用して、約5ピコテスラ分解能のMIセンサを手作りで構成した。次いで、高密度実装のピコテスラMIセンサを試作した。これらのMIセンサを用いて、(1)人体脊髄部の生体信号検出、(2)環境計測応用として、大型風力発電用風車の超低周波振動測定を実施した。(1)では、両目の開閉による覚醒意識レベルを反映した生体信号時系列を記録し、FFTで周波数スペクトル解析を行った。(2)では、新舞子の40 m高さ大型風車の前方100 mで約1Hzの鋭いパルス状の地面振動が発生することが分った。

 なお、携帯電話用の地磁気利用電子コンパスの需要が、GPSの標準装備化に伴って急激に増加しており、平成21年の1,000万個から平成22年1億個、平成231.8億個予測となることが分った。MIセンサを用いた電子コンパスもこの流れで急増していることが分った。

資源循環システム評価研究会  (代表 藤澤寿郎)

効率的な資源循環システムの構築は、持続可能社会の実現、とくに「待ったなし」と言われる地球温暖化の防止にむけて必須の課題であり、そのためには、提案されたシステムの温暖化防止効果だけでなく、経済性等をも考慮に入れた実現性の的確な評価が必要である。本研究会は、あいちゼロエミッション・コミュニティー構想の事業モデルのフィージビリティー・スタディーを題材として個々のシステム評価の実例を積み上げて、将来の評価システムの構築の準備を進めることを第1の目的とし、新たな産学官連携プロジェクトを企画することを第2の目的とする。

第2の目的に関しては、環境省チャレンジ25地域づくり事業計画策定に応募し、採択された。(事業期間 平成232月まで、事業経費 約23,000千円)。第1の目的に関しては、昨年度採択された経済産業省「非加水発酵技術の実用化と農商工連携による畜産バイオマス地域内循環システムの実証」事業に数名の上席研究員をコーディネータとして派遣し、グループ間連携および報告書作成および同指導・補助などの業務を担当した。

低炭素エネルギーシステム研究会 (代表 服部 忠)

将来の温暖化ガス排出規制強化に対して十分に対応するためには、現在の省エネルギーを中心とする対策技術だけでは十分でなく,炭酸ガスを回収、貯蔵するCCSCarbon Capture & Storage System)技術開発が推進されている.これに対して,当研究会では、炭酸ガスではなく炭化・固体炭素としてリサイクルまたは貯留することにより低炭素社会を実現するための技術課題を抽出した.また,このような地域モデルを構築するため,化学工学の視点から,次世代の技術開発を目指すプロジェクトテーマの提案を目的とし、4回の研究会と2回の見学会を実施して、以下の活動を行った.

1. 
中部科学技術センター「中部イノベーション創出共同体提案型連携構築事業」の公募事業に採択され,「高付加価値化を含めた低品位炭素の有効利用連携構築研究会」の立ち上げと活動の実施.2.  木質系と汚泥系バイオマス賦存量とその炭化技術,炭化物の高付加価値化に関する調査研究
3. 
炭化物製造設備の見学
・田原リサイクルセンター炭生館(可燃ごみ炭化施設)
・(有)松井工業(木質炭化施設)
東京都下水道局砂町水再生センター東部スラッジプラント(下水汚泥炭化設備)
4.   炭化物の規格化指針の抽出
5.   炭化物回収型エネルギーシステムのあり方の検討
6.   ブレークする技術開発の検討
7.   プロジェクト研究の検討

中部都市鉱山研究会 (代表 藤沢 寿郎)

 平成21年度は、環境省の使用済み小型家電の回収モデル事業に応募、採択され中部都市鉱山研究会のメンバーが中心になり、産学官、NPO、市民の広域連携で実証実験を行った。
 実証実験は大都市名古屋市とその周辺都市津島市が連携し、人口や交通、流通、製造業の集積等の好条件を活かし、効率的で高品質なレアメタル最適リサイクルシステムを、構築する事を基本にしている。
 現在、小型家電を最も多く回収するシステムは自治体であるが、自治体の不燃ごみ処理施設はレアメタル回収に不向きであり、市民にとって利便性の高い回収システムの構築を目的として
1、    自治体による指定袋ステーション方式
2、    市民の自主的な資源回収運動であるリサイクルステーションによる回収
3、    古紙回収リサイクルステーションにおける回収
4、    店頭(ショッピングセンター、リサイクルショップ)における回収回収した小型家電は、手分解および機械分解を行い、素材ごとに選別して、レアメタルを高濃度に含む部品を抽出した。分解作業については市民ボランテイアや障害者、また熟練作業者による分解、選別実証を行った。
 中部都市鉱山研究会はこの実証事業を進めるために密接な協力関係を継続しながら、本事業を推進し、シンポジュウムやイベント出展等の啓発活動をおこなってきた。
 また、名古屋産業科学研究所は事業全体の管理法人として全体の進捗、また本事業の全体の統括責任者として、都市鉱山研究会の座長である藤沢敏治名古屋大学教授が担当した。
 本事業は「平成21年度使用済み小型家電の回収モデル事業」として環境省に報告書を提出した。 

 本事業はさらに22年度も継続事業として小型家電の効率的回収と効率的な選別、分解方法の探索を目標に継続する事が決定している。

難分解性排水の光触媒処理技術研究会 (代表 石田英樹)

  一般的に化学工場における排水処理には活性汚泥を使用した生分解技術を採用している。この方法は易生分解物質を含む大量の排水を処理するにはきわめて有効な処理法であるが、決して万能ではなく、難生分解性物質をある量含む場合には必ずしも最適な処理法とはいえない。本研究会は、前年度、難生分解性物質の効果的処理法の開発について企業から依頼を受けて発足し、特定の実排水の光触媒分解を検討し、光触媒分解プロセスの採用を企業に提案した。
 本年度においては、引き続き、難生分解性実排水の光触媒による効果的処理法について検討を行った。具体的には、昨年度取り上げなかった新規実排水の光触媒分解特性および各種排水の混合物の分解特性を調査し、光触媒分解法がこれらの難生分解性排水の処理法として効果的であることを明らかにした。さらに、光触媒分解の阻害要因に関して調査研究を行った。これらの結果をもとに、委託元企業においてパイロットスケールの実験を行い、実装置化が検討される予定である。

組込みシステム形式手法研究会 (代表 毛利 佳年雄

 自動車や航空機のような,複雑かつ高い安全性を求められるシステムを実現するための開発技術の一つとして,形式手法と呼ばれる数学的理論を背景にしたシステムの設計及び検証の手法があり,IEC61508のような安全関連規格でも特に高い安全性を要求されるシステムにおいてはその利用が必須とされている。しかし実際には,手法の理解に一定のスキルを必要する,既存の工程にうまく適用する方法が不明,などいくつかの問題があり,現場で受け入れられるためにはそれらの課題を解決する必要がある.
 そこで本研究会では,形式仕様記述及び形式検証技術によるシステム設計及び検証の実例を積み上げ,産業応用上の知見を蓄積することを目的として活動を行っている.今年度は2月及び4月に2回の研究会を開催し,勉強会の実施及び今後の活動の方向性について検討した.

 今後は,AlloyEvent-Bなど主に上流工程を対象とした手法,及び,プログラムの検査など下流工程を対象にした手法を対象に,事例調査などの情報収集,システムのモデリング及び検証の実践,並びに,セミナの実施及び学会発表などの活動を予定している.


排水からの資源回収に関する研究会 (代表 中村正秋)

 リチウムイオン電池、薄型ディスプレイなどの省エネ型の次世代機器の製造工程では、地球温暖化の原因となるVOC(有機溶剤)および、枯渇資源であるレアメタルを多く含む排水が排出されているにもかかわらず、これらの資源を回収していないのが現状である。本研究会では、工業排水からVOCおよび、レアメタルの回収に関する技術開発を目的とする。そのために、調査、講演・見学会、各種研究助成事業への応募などを実施する.

 本研究会は平成2112月から活動を開始し、以下の活動を行った.

1.各委員の技術・研究内容の紹介

2.各種補助金制度の紹介・相談

3.企業委員からの課題・問題点についての話題提供

4.名古屋市工業研究所内の見学

5.平成22年度 循環型社会形成推進科学研究費補助金への申請

 今後は、調査研究、講演・見学会、各種研究助成事業への応募などを適宜、実施する予定である

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